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先見日記

先見日記とは 先見リメ[ス

2003 Dec 23
片岡義男
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中嶋朋子
















謝罪する男たちの国
自宅にて

 ミーティング・テーブルと呼ばれることの多い、会社の備品としての貧相な細長いテーブル。脚は折り畳むことが出来る。このテーブルを壁ぎわにふたつ横にならべ、そのぜんたいを白い布で覆う。中央にはマイクが何本も立ち、テーブルの向こう側にはこれも事務用品の椅子がいくつかある。この椅子に3、4人、あるいは4、5人の中年から後年の男性がすわり、記者たちに向かって記者会見をする。自分たちの会社が犯した、社会的な犯罪と言っていい失策や判断の誤り、対応や対策の不備などについて、男たちは通り一遍な言葉で謝罪する。そして揃って椅子から立ち上がり、記者たちに向かっておじぎをする。いまの日本でさまざまな企業がひっきりなしに起こる不祥事の、いちばん表向きの後始末の風景だ。この様子はTVで放映され、新聞には写真が掲載される。

 この写真を僕は切り抜いてとってある。12月も23日となった今日、1年分たまっているのを取り出し、作業テーブルにならべて観察してみた。驚くほどたくさんある。どの写真のなかでも、会社の男たちが頭を下げている。その男たちのかもし出す雰囲気、顔つきや態度、人品骨柄などの、揃いも揃ってなんという貧相さであることか。教養や見識、鋭い洞察力、洗練された戦略思考、充実した説得力をたたえた言葉など、いっさい期待できない様子は僕の受ける主観的な印象ではなく、彼らの現実なのだ。長くかかわってきた専門領域であるはずの知識や体験も、記者たちにちょっと突っ込まれると素人同然のしどろもどろぶりを露呈する。人に向かっておじぎもちゃんと出来ない。ここで泥をかぶるのが俺のめぐり合わせ、とでも言いたげなふくれっ面をしている人が多い。

 これがいまの日本なのだ、とテーブルに広げた切り抜き写真を見渡して、僕はつくづくと思う。これからも日本はこれでいくほかない。もっとひどくなるだろう。頭を下げているどの男たちも、大企業の要職にある人たちなのだが、その要職は燃え盛る情熱に支えられ、あるとあらゆる努力を重ねて獲得したものではなく、無難なそつのなさゆえに順送りで到達した、まあこんなものか、という程度の自覚しか持っていない、名刺の肩書なのだ。その任にあらずその器でもない人たちが、能力も意欲も自覚もないままに、社会もあらゆる領域で要職についている。切り拓かれていく新たな地平としての未来が、このような社会にあり得るものなのかどうか。ないよ、そんなもの、という答えが少なくともいまはいちばん正しい。

 2003年の締めくくりとして、僕は首相の写真を切り抜いておいた。12月9日午後5時10分、自衛隊派遣を閣議決定したあと、記者会見で憲法前文を読み上げているときの首相だという。カラー印刷だ。閣僚や官僚が謝罪している写真を見たことがない。まして首相においてをや、という古風なキャプションを、この切り抜きにボールペンで書いておこう。

End


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