スポーツと金銭
自宅にて
ベストセラー現象のレベルが低過ぎるのが日本国。出版という営為それ自体が、今や知的無階級社会や衆愚を生み出す悪循環に陥っているのではないのかーー。
そんな議論になった時に、いつも思うのは、なぜいじましく全部ヒットさせようとするのか、ということです。一冊だけで考えるからいけない。
a)間違いなく売れる。
b)あわよくば売れる。
c)とても売れそうにないが、存在理由大いに有り。
ーーの3点セットで考えられる人が本当に少なくなりました。
こうした思考の幅の狭さは雑誌の企画者にもあてはまります。″結果欲しげ″な顔ばかりしているから、ご本人のみならず社会全体が卑しくなってきました。
イントロからして、いきなりの余談でしたが、ビジネス書隆盛の中、スポーツ関連書の棚は狭くなるばかり。そりゃあそうです、チャイルディッシュなガラクタ本ばかり出して来たツケが回って、僭越な言い方を敢えてすれば、読者が育ち損ねたんです。
その一方で、身内言語でのみ書かれたアカデミズムへの立てこもり現象も相変わらず。知的コンプレックスの強い編集者との両極化は、まあ、昔からのことなんですけどね。
ぼくが日曜日の新聞に書かせてもらっているスポーツの新刊評にしたって、今では4週に一回の超ロウペース。残念だけど、そんなペースで丁度いいのかな、と半分納得もしている訳です。つまりローテーションに縛られて、とりあげる程のこともない本についてまで書くというのがいちばんよろしくない。次はこれで行こう! と真贋を見極めながら選んだ瞬間、書評という営みの半分以上が終わっているんです。
そんなこんなで、実も有る売れ筋を探すのが本当に難しい。現時点で咄嗟に挙げられるのは、マイケル・ルイス著『マネー・ボール』(中山 宥訳/ランダムハウス講談社)ぐらいかもしれません。
『マネー・ボール』は、04年3月にほぼ一年半遅れで翻訳刊行され、現在、8刷。新しく巻かれた帯(=腰巻)には、「各紙(誌)で絶賛!」てなことが書かれており、そこにはなぜかぼくの名前も。本屋さんでギョッとなったものです。
でもな〜、或る意味では、これだって一種のITビジネス書。おカネをかけず、いかにオークランド・アスレチックスを強くしていったかというパソコン重視時代のお話ですからね。ただ、ミステリアスなキャラクターのGM、ビリー・ビーンの描き方には一日の長があります。さすが腐ってもアメリカン・ノンフィクションと唸ってしまいたくなるのは、普通の書き手ではとても入れそうにない生々しい現場に取材者たる著者が居ること。つまり或る種の「公認」なり「信頼」なりを球団側から受けていた訳です。
羨ましいのはそんな調査報道に対するタフネスと、それでもベースボールに専心できる心意気。ロシアの石油成金、ロマン・アブラモビッチの怪しいおカネを遣いまくるイングランド・プレミアリーグの新チャンピオン、チェルシーFCとは全く対照的で、どちらが感動を呼ぶかと言えば、そりゃあもう、清貧イメージのA'sなんでしょうね。しかしながら、今季のアスレチックスは5月12日時点で4球団からなるアメリカン・リーグ西地区の3位とふるいません。
野球、サッカーに限らず、「順位表の備考欄に年間予算金額の順位も!」とぼくなどは前々から主張しているんだけど、さすがにそれは子供の教育に悪いということでしょうか、現状どこもやる気がないようです。
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