生涯ベストワン
自宅にて
先日、友人達と例によってファミレスでぐだぐだと話をしていると、最近見たり聴いたり読んだりしたものの中でオモロかったもんて何? といういかにもヒマな時の、話題になったんです。
友人Kさんは、とあるアニメーションの話をして、
「もしかすると生涯ベストワンかもしれない」
と言ったりしてね。はぁ〜、マジですか、それは見にいかねば! とか見に行くつもりゼロミリグラムで言ったりしてね。
順番に、そんなネタを披露していくわけですわ。
で、僕はというとキム・ギドク監督の「弓」という映画について話しました。
でも、あの実は僕、この映画を全面的には支持できないのですが、その理由ははぶきますが、えーと、とにかくその場のメンツ的にも、この映画の話をするのが最適と思って話したわけなんですよ。どうせこの人たちこの映画見ないだろとたかをくくって、ストーリーの最初から最後まで、臨場感たっぷりに語ったんですよ。感情こめてね。ファミレスで。身振り手振りを交えて。わけのわからない手応えを感じながら。けっこう、引き込まれてましたで、わたくしのトークに。
と、その直後に事件は起こりましたよ。
僕の話がおわって、次にYくんに尋ねたんですよ。
最近、見たものの中でなんかおもろいものってあった?
そしたらYくんが
「いや〜、今の映画ですね」
て言うんですよ。
いやいやいやいや、見てないでしょ、この映画。いま、話を聞いただけっしょ?
「そうなんですけど、う〜ん、生涯ベストワンかもしれないです」
いやいやいやいや、見てないから! 話を聞いただけだと映画を見たことにならないからさ。
「そうですかね〜?」
と、なんか、こっちに疑いの眼差しですよ。えー? でも、なんかYくんにとってはもう「弓」が生涯ベストワンになっちゃったみたいでした。これだいじょうぶですかね?
これ極端な例だけど、なんかもー、それでいっか〜? てな気分になりました。できればYくんには、この映画を見ないまま生涯ベストワン映画として記憶し続けてほしいような。オリジナルに触れることがそんなに大事なことなんかえ? と。
思えば、僕が子供のときに読んでいたものには、かなり大量の翻案ものや抄訳が混じっていました。それで、ガリバー旅行記すげー、とか思ってたわけですよ。大人になってまともなものを読んでみたら、もっとすごかったんだけど。でも翻案ものがなかったら、少年期にガリバー旅行記に思いをはせることもなかったんで、翻案さいこー翻案ありがとー、と言わずにはいられない。
ある話を、ひとが勝手にアレンジしたりするのは、僕にとってはたいへん好ましい。著作権に関する議論で、なにもかもクリアーな結論を導きだそうとしたりするのは、その正しさは別にして、ツマンネーーーーーー! とついつい思ってしまいます。
見たことない映画が生涯ベストワンになったりする程度には、自由でありたいと思うのです。

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