腹ぺこと満腹
自宅にて
この間岩波書店から出した『戦後腹ぺこ時代のシャッター音』についてのインタビューがいくつかあった。同時に題材となった岩波文庫10冊の復刻も関心を呼んでいるらしい。1つの本についてのインタビューが重なるのは、真面目に考えるとけっこう難しい。対象が同じ本だから話はどうしても重なるのは当然だけど、でもその都度何か新しいことを話さないとわるい気もする。
で、今日の話で、戦後と今との違いは、一言でいうと職人の価値の低下だといった。もう一言、つまり二言いうと、職人と金貸し、この両者の価値の逆転したことだ。一言でいえないことは、二言、三言と発展する。
その前に、インタビュアーから、この復刻された岩波写真文庫のうちの半分は、世の中からなくなったものですねといわれて、なるほどと気がついた。石炭、汽車、捕鯨、蛔虫、馬、ソヴィエト連邦、いずれもいま姿を見ないものばかりだ。石炭は石油に変り、捕鯨、蛔虫、ソ連などはそのままどこかへ消えた。
そんな時代の変化を別の方向から一言でいうと、職人の低下と金貸しの向上。でも金貸しという言葉はいまは実質的に放送禁止だそうで、大新聞、大雑誌なども使えない。じゃあどういうかというと、金融業といい替えるそうだ。金貸しだと正体が見え過ぎる。だからやめてくれという要請が広告主からあるらしい。日本は民主主義だといいながらも、広告主は首領様である。
で、一方の職人というのは、物を造る人。もう少しいうと目に見える産業世界の人。つまり何も造らず金だけ動かす商売、以外の人だ。となると、農業もスポーツ選手も教師もサービス業も職人に含まれる。その価値が低下して、何も造らず金だけ動かす人の地位が向上しているのが、あの時代とこの時代のいちばんの違いだと結論したのだけど、何だか書いていてうんざりしてきた。
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