理解可能不可能
カフェにて
アメリカはモンタナ州辺りにはホース・ウィスパラー(horse whisperer)と呼ばれる人たちがいて、その名のごとく馬と話ができるそうな。以前、ロバート・レッドフォードがそれに扮した映画がありましたね。あれ、です。
ニューヨークには動物精神科医がいて、日中マンションでひとりぼっちにさせられているものでノイローゼ気味になった犬猫を往診してはカウンセリングしているそうな。はい、動物もノイローゼになります。動物園でおりの中をぐるぐると回っている虎だのライオンがいますでしょ。あれも、そう。
そーいえば、昔。ある大精神科医が、飼い猫の様子がおかしいと獣医のところへ連れて行ったそうな。海外出張の娘さんに、くれぐれも世話を欠かさないようにと言われていたので、万が一のことでもあったら大変! と思ったのだったが、獣医は入念な診察の後、「ノイローゼですな」と一言。
馬犬猫が果たして人間の言葉を解するか否かについては、諸専門家の見解が分かれるようだ。それは“専門家”というのが、言葉について十分な洞察を持つことが少ないからか、あるいは洞察を持つ場合には動物の生態に詳しくないからである。
しかし、前回の日記に書いたごとく、ヒトが人間の言葉をまともに喋ったり理解したりするとは限らない以上、馬犬猫が人間の言葉をヒト並みに理解出来るはずはない! と断言することは出来ないと思われる。管見によれば、あの携帯電話お客様サービス係よりよっぽど理解力のある猫は、うちの近所にもたくさんいる。
例えば、巨大黒猫のペチカ。往来で見かけると僕は「ペチ!」と挨拶することにしているのだが、彼は必ず「ウゼー」と一声挙げて塀の隙間に消える。
尻尾なし。路地で遭遇したとき、「他の子を脅しちゃいけないよ」と言って聞かせようとすると、いやな目つきでこちらを睨みつつ、ミャミャミャーとだみ声で口答えする。
……なんてな話をコーヒーを飲みながら話していたら、友人の内科医が言うには、最近、患者に不可解な文句の付けられようをされることがやたらと多いのだとか。
中性脂肪の多い患者に対策を聞かれて、「まずは甘いものを控えてみたらいかがでしょう」と答えたら、患者が「そんなのは大きなお世話だ」と怒りだし、は? とびっくりしていたら、「医者だからとばかりに上からものを言うのはけしからん」と叱られたりするそうな。
さすがに精神科ではそんなのはないなあ。病人には心優しい人が多いから……と言いかけて、思い出した。「あなたは精神病ではないので薬は必要ありませんよ」と言ってあげたら、喜んでくれるどころか「ドク(ター)ハラ(スメント)だ!」と文句を言われたことがある。
……とかなんとか話していて、僕が「結局、これからの時代、人間の医者より、獣医や犬猫精神科医の方がいいかもね」と言ったら、友人は「いや。俺は犬猫そのものになりたいな」ですと。その気持ち、よく分かります。

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