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先見日記

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2008 Jul 11
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サイエンスカフェ
札幌にて

 科学者と市民とが対話できる場として、「サイエンスカフェ」という試みが各所で行われています。僕が所属している北大の科学技術コミュニケーター養成ユニットでも、札幌駅前の大型書店が入ったビルのオープンスペースを会場に、すでに合計32回開催しています。大学が単独で主催する企画としては、おそらく国内でも最も長く継続していて、回数も多い部類の一つだといえるでしょう。ウェブサイトから、そのエッセンスを音声配信(ポッドキャスト)していますので、興味を持った方はぜひ聴いてみてください。

 今でこそ日本各地でも行われるようになりましたが、サイエンスカフェの発祥の地は英国です。BBCで科学番組を手がけていたTVプロデューサーが、パリの哲学カフェをヒントに、1990年代の終わり頃から地方都市で始めたのが、次第に英国各地、オーストラリア、米国などへと広がっていったのです。多くの場合、会場となるのは文字通りのカフェやパブ、あるいは書店、コミュニティスペースなど。コーヒーやビール、ワインなど飲み物を片手に、気の置けない雰囲気の中で、ふだん滅多に出会うことのない科学者と市民とが、フラットな関係で対話できるようなプログラムとなっています。

 講演会などと違う点は、カフェのような空間のしつらいだけではありません。科学者からの話題提供は長くても20分程度。パワーポイントなどの資料はなるべく使わず、平易な言葉づかいで、研究トピックを分かりやすく提供するにとどめます。中心となるのは、会場に居合わせた参加者との質疑応答やディスカッションの時間で、科学者からの話はこの対話の時間を促し、盛り立てるための触発材という位置づけになるわけです。

 科学者がふだん使う言葉は、同じような研究分野に属する人々との間で共有された前提の上に成り立っています。メディアを通して彼らの言葉が流通することは多々ありますが、それが報道の文脈の中で誤用されたり、市民の間に思いも寄らない反応を引き起こしたりすることも少なくありません。サイエンスカフェという試みは、これまで問題になってきたような科学と社会とのディスコミュニケーションという問題の全てを解消できるわけではありませんが、科学者が直接、「生身の人間」としての市民と出会うことで、そうしたディスコミュニケーションを解消するキッカケを与える場であることは間違いありません。学会やシンポジウムや公開講座のようにオーソライズされた場所から科学者を引きずり出し、「生活の言葉」で語り合うこと。それは、市民に新たな知的発見や興味をもたらすだけでなく、当の科学者自身にとっても大いなる学びになるのです。

 次の土曜日(7/19)には、33回目のサイエンスカフェを開催します。今度のテーマは「分子」。高分子化学や分子エレクトロニクスの研究者と、札幌を拠点にインスタレーションなどの作品をつくるアーティストをゲストにお招きして、科学とアートにある共通性や差異を発見できるような対話を試みたいと思っています。

End

















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