暑いときには
カフェにて
日曜日、突然、我が家のブレーカーが落ちた。戻して、クーラーにスイッチを入れると、また落ちる。2、3度繰り返すうちに、ブレーカーについている漏電表示のぽっちが飛び出た。
電話をすると、東電の、20代半ばとおぼしき若い技師がやってきてくれて、チェックした後、「漏電はクーラーです。多分、昨日の雨で、水が基盤に入ってショートしたのでしょう」と言う。「今日は方々で似たようなことが起きていて、お宅でもう8軒目です」
その雨というのは、東京では珍しい短時間ながら激しいタイプの雨だった。ちょうど、真夏に関越道を走っていて、埼玉と群馬の境目ぐらいで経験するようなやつ。突然、前が見えないほどになって、ワイパーも効かず、至る所で路肩に車が停まっているが、その列に並ぶのも後ろから突っ込まれそうで危なっかしい気がして、そろそろと進んで、多分工事車両なんかのために用意されているとおぼしきスペースを見つけて、ようやく駐車。そういう経験を何度かしたことがある。
それ式の雨が、土曜日、東京で降ったのだった。家の中にいれば、それはそれだけのこと、のはずだったが、翌日、停電。
東電青年君は汗まみれながら、丁寧な口調で、クーラー以外には漏電区間がないと説明をしてくれる。了解。安心しました。冷蔵庫の中からちょっと温くなったアクエリアスを取り出して飲んでもらってから、言われた通り、メーカーM電気はお客様サービスに電話する。
え! 聞き違えたかと思った。作業に伺えるのは木曜日だってえ? それまでの間、人間3人、犬1匹、猫2匹を冷房なしの状態で暮らさせるのは、そりゃどう転んでも「お客様サービス」とは呼べません。呼べませんよー、M電気さん。
この次からは、別の会社の製品にするとして(確かに、専門知識で有名なビックカメラでも、店員さんはD社を薦めていましたな)、しかし、当面、どうする? まだ5日もあるよ。
というわけで、昼夜すっかり煮込まれた翌日、つまり今日、僕がやったのは、“地価日本一の鳩居堂前”の奥、つまり鳩居堂そのものへ行くということだった。入り口を入ってすぐのところで団扇を選びます。やっぱり朝顔模様が良ろしかろう。
うーん、本物の朝顔も欲しいよね。もちろん自分で買いに行けば良いわけだが、「お暑いので、ちょっと買ってきました。どーぞ」「これはこれはありがとうございます」なんてな会話もいいかも……なんて空想しながら、次は扇子を選びます。
鳩居堂の中はすごい。フランス語、中国語。ま、どちらも僕はよく知らないが、それとおぼしき単語が行き交っておりまする。
そういうインターナショナルな雰囲気の中、今年の扇子は紺一色のにした。
値段を言えば(さすがの僕も、そこまで野暮はしませんです)あれまあおやまあだが、それだけのことはあって、あちこちの会社なんかが関係者に配るのとはモノが違いまする。団扇だって、当然、道ばたで配っているのとは、嘘のようだが、風のおき具合が違う。と、まあひとり満足しながら、(団扇は鞄に収納して)扇子をぱたぱたさせながら、夕暮れだというのに蒸し切ったままの街を歩いていたら、カフェの窓ガラス越しに、中で涼むお坊さまを見つけた。3人も。皆、絽の袈裟を着て向こう向き。別々の席に座っている。そうか、東京は今日からお盆なのだった。
僕もアイス・コーヒーでも飲もう。

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